謎を読む

謎を読む/ジェフリー・ディーヴァー『ボーン・コレクター』(池田真紀子訳、文藝春秋)
マサシです。先日、大学の講義で、アガサ・クリスティの『アクロイド殺し』を映像で観る機会がありました。名探偵ポアロが隠居先で出会った殺人事件を解決するという、犯人探しのストーリー。原作との違いが大きく、観るならそれ単体の作品として楽しんだほうがいいかもしれません。原作は、読者に対してフェアかどうかという点で議論されたり、現代では違う解釈がされるようになったりと、興味深い作品となっているようです。同作者の有名な『そして誰もいなくなった』は、翻訳の問題か読みづらかった印象がありますが、ミステリーの代表といえます。

随所に散りばめられた人物の動作や証拠が繋がり、探偵役が導き出す一つの結論。物語のパズルが解かれたときの感覚はたまらないものですね。そんなわけで、今回はアメリカの作家、ジェフリー・ディーヴァーが書いたサスペンス・ミステリーの『ボーン・コレクター』を紹介します。舞台はニューヨーク、ミッドタウン・サウス分署の警官アメリア・サックスと、四肢麻痺の元科学捜査官リンカーン・ライムのコンビが、連続殺人鬼ボーン・コレクターを追い詰めていきます。

この物語は、空港からタクシーに乗った二人の男女が誘拐され、その内の男性の死体が発見されるところから始まります。男性は生き埋めにされ、骨がむき出しになった指に嵌められた女性の指輪、そして、本来現場に有るはずのない物証が置かれていました。捜査を進めたライムは、それらが意図的に残された物証だと睨み、次の殺人が行われるであろう場所を推理、捜査班を急行させるも、誘拐された女性は既に焼き殺された後でした。物語の展開は次々と移り行き、第三、第四と犠牲者を増やしていくも、着実に犯人像を絞っていきます。鑑識の知識を持つ犯人とは誰なのか、なぜ骨に対する執着を持つのか、そして殺人を繰り返す動機は何なのか。

いわゆる“安楽椅子探偵”のリンカーン・ライムですが、一番の問題は、自らが死を望んでいること。数人の医師に相談するが断られ、遂に目的を叶えてくれる人物に出会うも、事件捜査の依頼に協力している間は、一時的に生き続けることを選択します。探偵としての強烈な事件への興味が、彼自身の生きる気力、命綱となるのです。犯人は捕まえなくてはならない、しかし、解決したらまた生きる気力を失ってしまう。ライムの事情を知る人物は、彼をどこに導くのか。本筋の謎だけでなく、周囲の人物との関係性の変化やユーモアのある会話など、海外ドラマ的な要素があり、好きな人はかなり楽しめるのではないでしょうか。

 

十角館
画像出典:https://www.ebookjapan.jp/ebj/141601/

 

街を駆け回り、あちこちの風景が描写される楽しさもありますが、閉ざされた地で起こる殺人事件を扱った、綾辻行人の「館シリーズ」も好きな本の一つです。高校の図書室で表紙絵に惹かれて読んでみたら、そのままドハマりしちゃいました。謎の建築家、中村青司が手掛けた奇妙な館で起こる殺人事件を扱ったシリーズ小説です。彼のデビュー作でもある『十角館の殺人』から読んでみてください。そんな作者は知らないという人も、『Another』の作者だと聞いたら、興味が湧く人もいるでしょう。

殺人事件が起きる話ではありませんが、江戸川乱歩原作の『人でなしの恋』もおもしろかったです。一見すると物静かで魅力的だが、その内に小さな秘密を抱える男性と、それに恋した女性との顛末を描いた物語。ゆったりとした雰囲気で進んでいく作品で、私は、美しく黄色に色付いた大きな木の下、女性が車椅子を押して歩くシーンがとても印象的でした。不気味な謎が暴かれたとき、タイトルと綺麗に繋がるのはさすがといったところでしょうか。

そもそも本格派推理小説だなんて、という点に立ち、皮肉でぶった切った作品が、東野圭吾『名探偵の掟』です。名探偵天下一とポンコツ警部大河原の二人が、お決まりのパターンに挑む小説。間違って真犯人を捕まえないよう探偵より先に謎を解き、読者には無能を演じなければいけないなどと警察が愚痴ったり、わざわざ面倒な手順を踏んで人を殺す必要は無いだろうと、元も子もないことを言う二人。同作者の『名探偵の呪縛』で、ミステリの世界は、主人公にとって心の遊び場であったといいます。古今東西、様々なトリックが考えられ、消費された現代において、純粋な謎解きで勝負を挑むのは、作家にとって厳しい状態だと思います。一読者として、謎を楽しむ心は、いつまでも忘れずにいたいですね。

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